山本です。
色々転職やキャリアに関する本を読んできましたが、 こういった本の著者の経歴は大きく分けて3パターンあることに気づきました。
ひとつめは、転職エージェントや人事など、仕事で転職支援や採用を行っている人が著者の、自身が支援した人や採用経験をもとに書くパターン。
ふたつめは 、ビジネスマンとして成功した人が著者の、自身の転職やキャリアの実体験をもとしたパターン。
そしてみっつめは、大学教授などアカデミックな人が著者の、統計や過去のデータをもとにしたパターン。
今回読んだのは、みっつめのアカデミックな著者がデータをもとに書いたキャリア本です。
それがこちら。
転職のまえに
著者の中沢孝夫氏は変わった経歴の方です。高校卒業後、郵便局に勤務。その後立教大学に入学・卒業。現在は兵庫県立大学大学院客員教授。専門は、ものづくり論、中小企業論、人材育成論。
そしてその経歴以上に驚いたのが年齢です。なんと1944年生まれ。70歳を優に超えていらっしゃいます。同著が2018年に出版されているので、74歳で書かれています。凄い。
以前、中沢氏に負けず劣らない年齢の方のキャリア本を読んだことがあります。その時は「全然時代に合ってなくて共感出来ん!やっぱこれくらいの年齢になるとずれてくるのかなー」と思ったものです。
しかし中沢氏は、この本は、人材業界に身を置く僕でも納得感のある、とても時代を切り取った内容でした。
「現場の声の聴きとり調査を積極的に行っている」という記述が多くあったので、実地調査で今の生の声をたくさん聴いているのでしょう。それが読んだ納得感に繋がっているのだと思います。
で、この本。タイトル的に、転職を考えだした人が読んでタメになる感ありますよね?
実際は全然そんなことありません。
なんていうか…著者がずっとファイティングポーズをとっています。
「近い将来、AIの発達で多くの人が仕事を失う論者」や「日本は雇用の流動性がないから成長産業が伸びない論者」に真っ向からケンカを売っています。現場を何も知らない机上の空論だと。
どれくらいケンカを売っているかというと、わざわざ間違っていると思っている本を引用して「これは間違っている」って言ってるくらいです。
引用された側はたまったもんじゃないです。
冒頭でキャリア本の著者は3パターンあると言いました。
どの本も学びがあります。でも仕事で採用に関わっている人は、多少のポジショントークはありますし、実体験をもとにした人はあくまで個人の一例です。(しかもめちゃ仕事出来る人の)
どちらにも共通するのは、とてもキャリアップ志向が強いとういことです。
でもこの本は違います。
そんなキラキラした転職の話が世の中フューチャーされるけど実際はこうなんだよ、と。
世の中、そんなバラ色の転職ばっかりじゃないよね、と言っているんです。
衰退産業にいるからって誰もが成長産業に転職したいと思ったり、転職できたりするわけじゃないんです。個人個人の事情があるんですよね。
そんな感じで、転職やキャリアに対する価値観や意識をニュートラルに出来る本かもしれません。
それじゃまた