エヴァンゲリオン新劇場版が公開されて宇多田ヒカルの「one last kiss」に衝撃を受け、ここんところ宇多田ヒカルの曲ばっかり聴いています。
いやぁ~…、宇多田ヒカルって天才ですね。地球って丸いよねくらい、いまさら何言ってるのって話ですが、最近改めて感じています。
one last kissから入って色々聴く中で、2002年発売の「光」に行きつきました。初めて聞いた時のインパクトはもちろんですが、聴くほど味がしてくるスルメのような曲だったので、思ったことをここに書いていこうと思います。
参考にPVと歌詞のリンクも貼っておきます。
キングダムハーツのテーマ曲としての「光」
「光」はPS2用ゲームソフト「キングダムハーツ」のテーマ曲として作られています。キングダムハーツの製作陣が、このゲームのテーマ曲は宇多田ヒカルしかいない!と熱烈オファーした結果らしいです。
僕自身はキングダムハーツをプレイしたことがないのですが、当時テレビから流れるCMには、目が釘付けになった記憶があります。上にリンクを貼ったYouTubeのコメント欄は、「キングダムハーツにぴったり」といったコメントが数多くあるので、実際にプレイした方がとても大満足できる曲なのだと思います。
前述のように僕はプレイしたことがないのです。ただ今回、光ってめちゃ良い曲だなーと感じたことで、ネットに落ちてるキングダムハーツのエンディングシーンを観たのですが、確かにゲームの世界観を、とても丁寧に曲に反映させていると感じました。
ストーリー的に、心の「光」と「闇」がキーワードになっているようで、光はタイトルはもちろん、歌詞にもちりばめられていますし、闇もそれに類似するワードが頻出します。
TVCMには、主に曲冒頭のサビ部分が使われていました。
どんな時だって たった一人で 運命忘れて
生きてきたのに 突然の光の中、目が覚める 真夜中に
一拍目から重厚感のあるメロディーが始まり、一拍目の裏から歌いだす出だし。最高ですね。歌詞の中に光と真夜中(=闇)が入っていて世界観バッチリ。(まあCMの15秒間では「真夜中」まで入ってないんですが)
「運命」っていうワードもファンタジーRPGっぽくて良いですよね。
この曲、ゲームのエンディングで流れます。そのタイミングがまた絶妙なんですよね。曲の流れと映像が合いすぎてるので、たぶん曲に合わせて映像の流れや秒数を決めたんだと思います。制作側が曲に合わせる。それだけ曲のパワーが強いってことですよね。
エヴァンゲリオンもそうですが、宇多田ヒカルはアーティストとしてはもちろん、タイアップ曲を作ることにおいても一級品だということがわかります。
男女の恋愛模様としての「光」
2番のサビが終わると、新しいフレーズが出てきます。
もっと話そうよ 目前の明日の事も
テレビ消して 私の事だけを見ていてよ
急にテレビという俗っぽいワードが出てきました。光と闇、剣と魔法のファンタジーの正解には似つかないワード第5位、テレビ。
歌詞からシチューエーションを想像すると、二人でテレビを観ているんだけど、片方はもっと話をしたいと思っている、という感じでしょうか。
「目前の明日」があまり聞きなれない言葉の組み合わせですが、明日が目前なのですから、おそらく日付が変わる前、夜の10時11時くらいの状況ではないかと推測できます。
ここで、1番のサビ前の歌詞を振り返ります。
今時約束なんて不安にさせるだけかな
願いを口にしたいだけさ
家族にも紹介するよ きっとうまくいくよ
どうもハッピーではない雰囲気ですね。あと特徴的なのがここで歌の音域が明らかに下がります。 それはつまり、これは男性のフレーズってことなんですよね。きっと。
一見、キングダムハーツの光と闇の世界観なのですが、歌詞を頭から読んでいくと、これは男女の恋愛模様になってるんです。
タイアップ曲としての仕事を120%こなしながらも、普遍的な男女の恋愛模様を描く。改めて、天才ですね。
宇多田ヒカル個人の私情としての「光」
宇多田ヒカルさん、本名は漢字表記の「宇多田光」です。曲のタイトルと同じですよね。それもあって、この曲はかなり私情の混じった歌詞なんじゃないかと思わせる要素がたくさんあります。
この曲の発売が2002年3月、宇多田ヒカルさんのプライベートでは、その年の9月に結婚されています。この曲のPVを作ったのも、その結婚相手です。
そのため、この曲は10代から活躍していた宇多田ヒカルさんの孤独や葛藤、そして結婚相手に対する感情・私信としての意味合いのあったのではと感じています。
それぞれの観点から歌詞を追ってみる
以上の観点から、歌詞を頭から追っていこうと思います。
どんな時だって たった一人で 運命忘れて 生きてきたのに
突然の光の中、目が覚める 真夜中に
一人で生きている覚悟をして過ごしていたところ、運命の人に出会い、暗闇(=真夜中)に光が差したという感じでしょうか。
キングダムハーツのようなRPGにおけるボーイミーツガールの展開にハマりますし、宇多田ヒカル本人自身の恋愛感情とも受け取れます。
静かに出口に立って 暗闇に光を撃て
暗闇に光を撃つなんてファンタジーに合うフレーズですね。
それ以外の解釈が難しかったのですが、出口というのは宇多田ヒカルさんが、芸能界の外、本名光としていられる先なのではないかと思いました。暗闇に光を撃つというのは、本来の自分(光)に戻るというニュアンスなのではないかとお思います。
今時約束なんて不安にさせるだけかな
願いを口にしたいだけさ
家族にも紹介するよ きっとうまくいくよ
音域の低い、男性が話すフレーズです。
「今時約束なんて不安にさせるだけかな」が歌詞として秀逸。ドキッとしますよね。「今時」を付けるセンスよ。
雰囲気的には、今二人の関係をはっきりさせたい女性に対して、男性が答えを出さず先延ばしにしている感じがします。
今にこだわる女性と、もうちょっと先で良いじゃん、という男性。
当時宇多田ヒカル自身は19歳、そののち結婚する方は15歳年上の34歳だったはずです。真夜中に光を見出し、今答えを欲しがる宇多田ヒカルさんに対して、まだ19歳だしもう少し先で良いんじゃない?と諭す男性の姿がうかびます。
どんな時だって ずっと二人で どんな時だって
側にいるから 君という光が私を見つける 真夜中に
ここで1番、2回目のサビ。
たった一人で運命忘れて生きてきたところから、二人になっています。どんな時だって側にいるなんて、言われたいですよね…。
そしてここで、光=君ということが明示されます。歌い手の女性にとっての相手の男性の事ですよね。
うるさい通りに入って 運命の仮面をとれ
運命の仮面、ファンタジーフレーズ。
1番と比較すると、それぞれのフレーズが対比になっていることがわかります。
(1番)静かに出口に立つ⇔(2番)うるさい通りに入る
(1番)暗闇に光を撃つ⇔(2番)運命の仮面を取る
出口というのは、宇多田ヒカルさんが個人の「光(ひかる)」として過ごせる場所であり、うるさい通りというのは、宇多田ヒカルとして芸能活動をする場と解釈出来ます。
暗闇での光はポジティブな意味合いなので、運命の仮面を取るという行為はネガティブな意味合いです。「運命」というワードは冒頭のサビにも出てきます。運命は二人でいることと近しいので、恋愛関係を隠して芸能活動することを意味していると思われます。
先読みのし過ぎなんて意味の無いことは止めて
今日はおいしい物を食べようよ
未来はずっと先だよ 僕にも分からない
2回目の男性のセリフです。1回目の会話の続きですよね。
今が不確かで不安な彼女に、おいしい物食べてとりあえず議論をうやむやにしようとする彼氏という感じ。かなり現実的な内容。男性のセリフにはファンタジー要素が少ないですね。
完成させないで もっと良くして ワンシーンずつ取って
いけばいいから 君という光が私のシナリオ 映し出す
3回目のサビ。
二人でいれば良い、と思っていたところから、それだけでは満足出来なくなり、「もっと良くして」と思うようになったと。
運命忘れて生きてきたところから、ここまでの心の変化が素晴らしいですね。
2番では君という光が私を見つけただけですが、今回はシナリオを映し出すまでになっています。
もっと話そうよ 目前の明日の事も
テレビ消して 私の事だけを見ていてよ
ここで音が1段高くなり曲が展開していきます。
歌い手の「君」に対しての愛情表現ですよね。
テレビは芸能活動する宇多田ヒカルの比喩とも感じられます。テレビ自体は光を発するものですが、それを消して私の事(個人としての宇多田光)を見ていて、というのが才能爆発してる感じです。
どんなに良くたって 信じきれないね そんな時だって
側にいるから 君という光が私を見つける 真夜中に
最後のサビフレーズ。歌詞の後半は1番のサビと同じです。
前回のサビでは「もっと良くして」と思っていたのに、今はどんなに良くてもわかんねえな、という心境に達しています。そんな、わかんねぇとしても側にいると。沁みるよ…。
もっと話そうよ 目前の明日の事も
テレビ消して 私の事だけを見ていてよ
最後のフレーズ。一番言いたかったのはこれってことですよね。
まとめ
宇多田ヒカル天才。曲めっちゃ良い。
それじゃまた