いや、記事のタイトル長い!
この内容は進撃の巨人31巻まで読んでいること前提で書いてあります。
まだの人はぜひ買って読んでみてください。(ネタバレなしで読んだ方が圧倒的に面白いので)
進撃の巨人は言わずと知れた超人気マンガです。
人間が巨人に立ち向かうダークファンタジーで、いつ何が起こるかわからないストーリー展開と絶妙な伏線が最高に面白いですよね。
そして「ハイパーハードボイルドグルメリポート」というのは、テレビ東京系列で放送された「ヤバイ所でヤバイ奴はどんな飯を食っているのか」に迫るグルメ番組です。
↓参考
テレビ番組なんですが、書籍化されていたのでそちらも読んだところ、書籍では、より詳細に取材の様子や背景が語られていました。
そのエピソードのひとつに、長い内戦があったリベリアに行ったものがあるのですが、それを読んで思ったんです。
進撃の巨人の世界そのものやないかい…。
そのエピソードのタイトルが「リベリア 人食い少年兵の廃墟飯」なんですが、人食い少年兵の時点でおう…もう…って感じです。
そもそも漫画の方も、ストーリーの最初こそ巨人との戦いですが、もと正せば内戦の歴史ですからね。
争いの歴史
リベリア最初の内戦は、「リベリアの先住民」と、アメリカの奴隷として連れていたかれて文明化されてからリベリアに戻ってきた「アメリコ・ライベリアン」との間に起こりました。
少数派の「アメリコ・ライベリアン」が政権を握り、先住民を弾圧していたところ、先住民の「クラン族」がクーデターを起こし、先住民が政権を取り戻しました。
しかし、クラン族政権は極端な圧政を敷いたため、今度は打倒クラン族反乱軍が生まれ、血で血を洗う内戦が続いたそうです。
珍しくない話です。クーデターで奪った政権をクーデターで奪われてしまう構図。
進撃の巨人でもクーデターを起こした調査兵団はその後、政権の立場を追われる立場になります。
14巻でハンジが憲兵にかけられた言葉に「こういう役には多分順番がある…役を降りても…誰かがすぐに代わりを演じ始める」というものがあり、31巻にはハンジの言葉で「…たぶん順番が来たんだ。自分では正しい事をやってきたつもりでも…。時代が変われば牢屋の中」というものがあります。
みんな自分が正しいと思って争い続ける。それが戦争なんですよね。
他にも、29巻で牢屋の前で頭を打ちぬくイェレナと31巻で拘束した義勇団の前で頭を打ちぬくフロックなど、進撃の巨人はこういった対比が多くあります。
「争いは繰り返される」というやつです。
少年兵になった理由
混沌とする内戦では、人手が足りなくなるので、子どもをさらって兵士として育てたりもしたそうです。
進撃の巨人でも12歳で訓練兵となり、3年後の15歳で正式配属されます。
取材の中で、元少年兵に兵士になった理由をたずねる場面があり、元少年兵の方はこう答えています。
「あの時俺は両親と暮らしていた。水を汲みに行った帰り道、家にロケット弾が突っ込んだ。それで両親が死んだ。」
そして兵士になった理由には「両親のための復讐」と答えています。
超大型巨人が蹴った瓦礫が原因で母親を失ったエレンそのものです。きっと、そういうきかっけで兵士となる少年は少なくないのでしょう。
人食い
別の元少年兵の方が、人食いの経験についてこう語っています。
「前線に出る時、俺たちはいつも呪術師(ドクター)の助言を求めに行った」
「彼は俺たちに支持を与える。例えば眼球を1対持ってこいと。それで俺は(人を殺して)目玉をドクターに渡した。ドクターはふたつの目玉を一旦水に浮かべ、再び持ち上げて俺の目にその雫を垂らした。もう一度、今度は口に垂らされて、これはその雫を飲み込んだ」
「それからは壁の向こう側を見通すことができたし、敵が近くにいると体で感じるようになった」
「人食い」が、特別な力を得るための儀式になっていた事がわかります。
これも巨人の力を持った人間を食べて巨人の力を得る「継承の儀式」に似ています。
この元少年兵の方に、戦争で人を殺した時の気持ちと、「人食い」した事を今どう思っているか聞いて、以下の答えが返ってきています。
「楽しかった。俺はまだ何も知らなくて、それがいいことだと教えられていた。友達と遊んでいるように、楽しかった」
「どうだろう、わからない。あの時の俺は幼くて何も知らなかった。全ていいことだって教えられてたんだ」
進撃の巨人でも似たようなセリフがありました。
10巻ではライナーが「俺達はガキで…何一つ知らなかったんだよ」と言っていたり、31巻ではアニが「人を殺すことは褒められることだった…」「使命のためすべての行いは正当化された」と言っています。
生きるか死ぬかの極限の状態で、少年兵はそうやって教え込まれて、前線に送り出されるのでしょう。
まとめ
今回はリベリアの話でしたが、他の戦争・内戦も似たようなことが起こっているはずです。
作者の諫山創氏は、現実に起こった様々な争いを学んで、ストーリーに反映させているのではないかと思います。
それゆえ、進撃の巨人のストーリーや登場人物は妙に生々しく、我々読者の心をつかんで離さないのではないでしょうか。
漫画はいよいよ佳境を迎えています。
消せない罪や過去を背負った主人公たちはどのような結末を迎えるのでしょうか。
こんなに大きな罪を犯しておきながら、ハッピーエンドの結末はありえるのか?
ただ、一読者として、今幸運にも生きている一人の人間として、彼らの幸せを願ってしまうのです。
それじゃまた